【TBSニュース】失敗したODAプロジェクトとしてボホール灌漑プロジェクトの映像を放映


(写真:円借款によるボホール灌漑プロジェクトで建設されたマリナオ・ダム。今年4月の関西フィリピン人権情報アクションセンターの現地調査でCFFC〔フィリピンのこどもたちの未来のための運動〕の藤原敏秀さんが撮影)


4月23日(金)に行われた事業仕分け第2段に関連して以下のニュースがTBS系列のテレビ局で放映されました。


ボホール灌漑事業の問題点について詳細は以下のサイトをご参照下さい)
FoE Japan | 開発金融と環境プログラム | フィリピン:ボホール灌漑事業
http://www.foejapan.org/aid/jbic02/bohol/index.html


(関連映像サイト①)
「マリナオ・ダムにおける隠された農民の動揺 」
日本の政府開発援助(ODA)によって1996年に竣工されたフィリピンボホール島の灌漑事業(マリナオダム)では、1363人の農民がフィリピン国家灌漑庁(NIA)とローン契約を結んで元々畑だった土地を水田に転換し、水利用費を支払う義務を負いましたが、実際には水が十分に供給されない一方で、農民の借金がふくらみ続けるという問題が起きています。
高木基金の2008年度アジア枠助成を受けて、フィリピンのWomen's Development Center (WDC)は、このODAで建設されたダムが農民の暮らしに与えた影響について、聞き取り調査などを行いました。WDC作成のこのビデオでは、地元の人々の実情を知ることができます(英語字幕)。*現在、日本語版製作中。各地での上映会運動協力者募集中!
http://www.youtube.com/watch?v=gBeYvpP-6QE


(関連映像サイト②)
フィリピン ODAのダム 暗殺疑惑 報道特集19:23
アロヨ政権下のフィリピン。日本のODAで造ったダムの水で農民は潤うはずでした。しかしダムには十分水が溜まらないため作物が育たず、水の使用料を取られるだけの農民もいます。この現状を告発しようとしていた人権運動家が暗殺されました。暗殺とODAとは直接関係は無いと思われますが、本ビデオはフィリピンの現状の一端を示すリポートです(報道特集NEXT 2008/5/25)
http://video.google.com/videoplay?docid=4912264474096421690#


 この放映の影響は大きく、翌日の事業仕分けの場でも「昨日(22日)の民放で放送されたようにフィリピンの灌漑事業では約5000ヘクタールが灌漑される計画で、JICAはすべてできている(水が回っている)と評価しているにもかかわらず、農民は『水が来ていない』と言っている」(松本評価者)と繰り返しボホール灌漑プロジェクトの事例が取り上げられ、以下の蓮舫議員の発言のように過去のODA検証の必要性が語られました。


蓮舫議員:「二度と起こしません」ということだけでなく、過去の問題を放置したままでいいとは思っていないということ。

説明者JICA:これまでの事業でも問題があるなら、対応していく。評価のレーティングはガイドラインに沿って行なっている。

蓮舫議員:過去の事業を調査して、問題を類型化して、二度と起こさせないという作業が必要。


「(こういった)甘い評価で終わらせるのでなく、しっかりと現実を見て厳しい評価をしていくべき」(仕分け人 民主党津川祥吾 参院議員)という発言にも見られるように、ODAの抜本的な見直しのためには、こうした過去のODAプロジェクトの問題点を政治家と共有化することが極めて重要です。


「JICAは私たちの取材に対し、『個別の事業に対する見解は、仕分けの場で話します』とコメントしています」とありますが、翌日の事業仕分けの場では、


説明者JICA:ご指摘のフィリピンの灌漑について簡単に説明すると、円借款において設備
を作る部分がある他、農場の末端整備は先方政府が受益農民に整備していただくことになっている。円借款部分はできあがり、水の供給能力はあっても、末端の整備ができあがっていないため、実際に末端に水が来ていないところがある。

 1999年の事後評価の時点では、(円借款部分の)施設は出来上がっており、現地に行きサンプルチェックをしたところ、サンプルのところは出来ていたということ。その後、実は外部から指摘をもらい、今年2月に現地に見に行ったところ、確かに水が届いていないところがあった。理由は水路の途中で堰き止めたり、上流側で水を多く取りすぎでいたためで、末端まで水が届いていないことを確認した。

 これを受け、2月にも見に行ったわけだが、早速来月(5月)にも、ちゃんとした調査をして対応しようと思っている。


と5月の現地調査の実施を表明しました。ボホール灌漑事業をめぐる情勢は大きく動きつつあります。こうした過去の問題プロジェクトの検証をきちんと行うことこそがODA改革の第一歩です。



(写真:関西フィリピン人権情報アクションセンターの今年4月の現地調査で現地のNGOから説明を聞くメンバー。「水が来ていても、水量が充分ではない(週2回しか水が来ない)」。水路の高低差を図っているところ。CFFC〔フィリピンのこどもたちの未来のための運動〕の藤原敏秀さんが撮影)


TBS News i(ボホール灌漑プロジェクトの映像が見られます)
http://news.tbs.co.jp/20100422/newseye/tbs_newseye4411034.html


仕分け第2弾、JICAの事業内容とは


 23日からいよいよ事業仕分け第2弾がスタートします。午後から取り上げられるのが、国際協力機構・JICAです。JICAについては、4項目が具体的に議論されます。その中で注目したのが、途上国にローンで資金を貸し出す有償資金協力とJICAが所有している職員宿舎です。23日の仕分けで、具体的にどんなことが議論されるのか独自に取材しました。


 外務省所管の独立行政法人国際協力機構・JICA。海外での震災時に国際緊急援助隊を派遣するなど、途上国に資金や技術を援助する政府開発援助(ODA)を担っています。


 JICAには、国から毎年1500億円を超える補助金が投入されています。前回の仕分けでは、割高な航空券を使用していることなど、組織の“高コスト体質”が批判されました。


 「ビジネスクラスを民間で今使う会社がありますか。できるだけ税金を使わないような審議をしたことがあるんでしょうか」(仕分け人、去年11月 事業仕分け


 理事の年収は1600万円から2200万円、職員の平均給与は国家公務員の1.3倍です。このJICA、今回は目玉として初日に取り上げられますが、具体的な事業の内容が明らかになりました。


 私たちが独自に入手したJICAに関する内部資料。そこには職員住宅の一覧が書かれていました。JICAが買い上げて所有する職員住宅は364戸あり、そのほとんどが東京近郊のマンションなどです。購入にかかった費用は合わせて約73億円ですが、問題はその入居率、全体の6割にすぎません。


 もう1つ仕分けの論点にあがるのが、JICAの柱としている事業、有償資金協力です。たとえば、途上国が道路などを作る際に、JICAがローンで資金を貸し出すものです。仕分けでは、JICAが自身の事業をきちんと評価できているかが議論となります。


 事業の1つ、フィリピンにあるボホール島での灌漑事業。稲作を進めるため、フィリピン政府がダムや用水路などを約80億円かけて造り、そのうち約50億円をJICAが貸し付けることになりました。工事は1988年に始まり97年に終わりました。しかし・・・。


 「水は今までこの土地に届いていない」(現地住民)


 現地のNGOによれば、今も水が来ていない地域があるといいます。しかし、JICAが2000年に出した評価報告書によれば、計画の灌漑面積4960へクタールに対し、実績は4973ヘクタール。つまり、予定していた土地、ほぼ全てに水が来ていることになります。これを見た議員は・・・。


 「(こういった)甘い評価で終わらせるのでなく、しっかりと現実を見て厳しい評価をしていくべき」(仕分け人 民主党津川祥吾 参院議員)


 JICAは私たちの取材に対し、「個別の事業に対する見解は、仕分けの場で話しま
す」とコメントしています。(22日23:11)