【事業仕分け・第2段】「有償資金協力」を議論−ボホール灌漑プロジ


【配信動画より、関西フィリピン人権情報アクションセンターが作成】


2010年4月23日(金)午後
事業仕分けWG A-3有償資金協力
議論一部(審査関連の議論のみ)


評価者(松本氏):(年度末に)融資契約(L/A)の集中する時期があるということから、(その前段階での)審査の集中する時期があるということになる。つまり、審査が疎かになり、審査の質の低下になる恐れがあるのでは?


説明者JICA:(審査が集中する時期があるのは)否めない。しかし、先方政府との協議なども行ない、審査以外に監理・フォローを通年している。


評価者(松本氏):毎年のように会計検査院から効果が発現していない事業についての指摘がある。例えば、フィリピンの鉄道案件は50億円貸付され、利用客250万人を見込んでいたが、54万人のみと利用客は少ない。

 その他、昨日(22日)の民放で放送されたようにフィリピンの灌漑事業では約5000ヘクタールが灌漑される計画で、JICAはすべてできている(水が回っている)と評価しているにもかかわらず、農民は「水が来ていない」と言っている。

 つまり、この位利用されるはずだったのに利用されていない、あるいは、来るべきところに水が届いていない。会計検査院NGOから、こうした事例が多く報告されているのを見ると、審査段階に問題があるのではと思うが?


説明者JICA:ご指摘のフィリピンの灌漑について簡単に説明すると、円借款において設備
を作る部分がある他、農場の末端整備は先方政府が受益農民に整備していただくことになっている。円借款部分はできあがり、水の供給能力はあっても、末端の整備ができあがっていないため、実際に末端に水が来ていないところがある。

 1999年の事後評価の時点では、(円借款部分の)施設は出来上がっており、現地
に行きサンプルチェックをしたところ、サンプルのところは出来ていたということ。
その後、実は外部から指摘をもらい、今年2月に現地に見に行ったところ、確かに水が届いていないところがあった。理由は水路の途中で堰き止めたり、上流側で水を多く取りすぎでいたためで、末端まで水が届いていないことを確認した。

 これを受け、2月にも見に行ったわけだが、早速来月(5月)にも、ちゃんとした調査をして対応しようと思っている。


評価者(松本氏):今、さらっと言われたが、これは途上国の困っている人たちを支援しようとしている事業で、水が来ない方々が10年間、グループを作り、抗議をしてきた。そ
の声を受けて、今年ようやく行動をとったということを見ると、円借款を効果的に行なう仕組みになっていないのではないかと疑問を感じる。

 タイの水力発電所の(JICAの)事後評価でも、レーティングがめちゃくちゃ。また、教訓欄は「無し」になっている。

 不当な債務を生み、かつ、開発便益がないという現地の無駄を作ってはならない。



(写真:灌漑されているはずの土地に水は来ていない。関西フィリピン人権情報アクションセンターの今年4月の現地調査でCFFC〔フィリピンのこどもたちの未来のための運動〕の藤原敏秀さんが撮影)


説明者JICA:新JICAになり、初期段階から協力準備調査と一体になって事業をやっていけ
ば、問題は少なくできる。


蓮舫議員:「二度と起こしません」ということだけでなく、過去の問題を放置し
たままでいいとは思っていないということ。


説明者JICA:これまでの事業でも問題があるなら、対応していく。
評価のレーティングはガイドラインに沿って行なっている。


蓮舫議員:過去の事業を調査して、問題を類型化して、二度と起こさせないという作業が必要。


説明者JICA:事前評価表には、過去の案件の教訓という欄があり、過去の教訓を踏まえて
行なうことになっている。そして、それを事後評価で検証している。

 先方政府にもそうした話しはする。


評価者(松本氏):JICAがきちんとした評価書を作っているのは知っているが、先程のタイの案件の評価は元JICAの大学教員がやっている。評価のあり方としていかがか。相手
政府はいいことしか書かない。


説明者JICA:2003年から評価方法を改善。公示し、プロポーザル方式にしている。2004年からは評価者名を記載し、その方に責任を持ってやっていただいている。


福山議員(外務副大臣):三省協議に第三者の意見をどう盛り込んでいけるかは考え中。
ODA評価委員会は廃止した。評価については真剣に考え中。


説明者JICA:直近で終った事後評価の中では、5%が発現効果の出ていない案件だった。
問題案件がないかは、定期的に棚卸しを行なうことにしている。

 発現効果の出ていない理由としては、案件の遅延が大きい。遅延の理由としては3つあり、環境社会面、特に移転などの問題があり遅れるケース、また、調達に時間のかかっているケース、また、途上国側の分担部分がうまくいかない等の理由がある。


評価者(松本氏):途上国側の理由は織り込み済みで考えるべきでは?計画段階で実施能力を盛り込んでいるのか?


説明者JICA:例えば、フィリピンの鉄道案件のように、モンスーンで壊れて稼働率が上がっておらず、予見できない事態だった。


評価者(松本氏):例えば、ケニアのタナ川の灌漑もモンスーンで壊れたが、そうしたことも含めて教訓化していく必要があるのではないか?


枝野議員:現場の問題案件、都合の悪い情報がJICAに上がってこないことが問題。

 それを解消しないと10年後も同じ状況が起こっているだろう。NGOの声が直接政務三役に届くようなシステムを考えてはどうか?


西村議員(外務政務官):NGO定期協議の場も含め、ハトミミのような仕組みも考えたい。


津川議員:世銀、ADBは独自の評価機関を持っている。検討してほしい。


●結論:縮小4名、現状維持9名、多くの評価人が審査機能の強化を指摘

(以上)