【今こそ失敗したODAの教訓化を!】フィリピン・ボホール灌漑事業被害農民からの訴え(2010年10月9日)


(写真:京都の報告会でボホール現地の被害状況を説明するレイナルド・ルチャナさん〔左奥〕、その左隣が通訳の波多江秀枝さん。2010年10月9日、ひとまち交流館京都)


2010年10月9日、日本の円借款により行われたボホール灌漑事業の被害者住民団体である「ピラーダム事業の犠牲になった農民連合(ALMABIPDA)」代表のレイナルド・ルチャナさんをお迎えして、京都のひとまち交流館にて公開セミナー「ODAによる灌漑ダム開発が招いた10数年の混乱〜フィリピン・ボホール灌漑事業住民組織の代表をゲストに迎えて〜」が開催されました。

【他団体の取り組み】フィリピン・ボホール現地からODA被害農民が来日−10・9 ODA による灌漑ダム開発が招いた 10 数年の混乱 (京都)
http://d.hatena.ne.jp/odanetkansai/20100919/1284869302

 主催は、フィリピンのこどもたちの未来のための運動(CFFC)と関西フィリピン人権情報アクションセンター、協力団体として国際環境NGO FoE Japan、ODA改革ネットワーク関西、AMネット、ジュビリー関西ネットワークなど主に関西在住のNGO6団体の協力により行われたセミナーで、フィリピン研究の泰斗である大阪大学国語学部教授の津田守先生をはじめ多くの若者・学生の方が参加され、19名の参加者は熱心にボホール現地の状況について耳を傾け沢山の質問をしていました。

 以下に紹介するのは、当日のセミナーにおける報告内容(パワーポイント資料)です。長年、ボホール現地の調査に携わっている波多江秀枝さん(FoE Japan委託研究員)からは事業の概要が説明され、ルチャナさんからは現地NGOが作成したパワーポイントを使っての生々しい被害実態の報告が行われました。


フィリピン・ボホール灌漑事業 事業の概要と日本の関わり
発表者:波多江 秀枝(FoE Japan委託研究員)
事業の概要と日本の関わり.ppt 直

フィリピン・ボホール灌漑ダム事業が招いた混乱と山積する未解決の問題
発表者: Reynaldo Luchana(ALMABIPDA)
山積する未解決の問題.ppt 直


 ここでは、報告の最後にルチャナさんから日本の関係者や市民に対して訴えられた提言とアピールのみを紹介しておきます(報告内容の全ては上のパワーポイント資料をダウンロードしてご覧下さい)。ぜひ、ルチャナさんの報告内容全文をお読みになり、ボホール灌漑事業の最新の状況をご覧下さい!

 この間、NGOと外務省やJICAとの交渉の場で、NGO側からは、ODA改革のためには過去のODAの検証、なかんずく過去の失敗したODAの教訓化こそが必要であると繰り返し主張されてきました。中でも、本ボホール灌漑事業は事業仕分けでも公に取り上げられ批判された失敗したODAの典型例のようなケースです。なぜこの事業が100%以上の成功と「事後評価」され、その後10年にわたって問題が放置されてきたのか。この事実に対して外務省やJICAが真正面から向き合い、真にその原因の解明と問題の解決に向けて動き出すかどうかはODA改革の本気度の試金石であるとも言えるでしょう。昨今、外務省やJICAは、NGOとの「協働」や「連携」をしきりに強調していますが、本当にその気があるのならば、こうしたケースについて教訓化する(このことは外務省により6月末に発表された「ODAのあり方に関する検討 最終とりまとめ」においても「過去のODAの教訓化」として明記されている)ための共同作業をNGOとともに行うべきではないでしょうか。ボホール灌漑事業がその手がかりとなることを切望するものです。

 また、この現地NGOの作成したパワーポイント資料こそが真実の「ODA見える化」に他なりません。国会議員、政治家の方々や多くの市民に見ていただき、ぜひ、現地調査をお願いしたいものです。


 管理人


Recommendations:

提言:

①灌漑庁の解決策の実施に関する継続的なモニタリング(特にJICA)

②犠牲者にとって公正な評価となるよう、整地作業地に灌漑用水が届いているか否か

の精査に関する明確な基準(条件)の設定(土質等を含む)

③JICAの現地調査の全結果の公開


Appeal to all the Japanese people to:

日本の皆さんへのアピール:

①日本の資金援助で進められたダム事業で被害を受けたボホール州の農民の活動を支

援してください!

②フィリピン政府(灌漑庁)がボホール灌漑ダムの失敗を認め、農民の要求に応じた

解決策を早急に実施するよう、JICAを通じて、お願いしてください!

③皆さんの税金が使われている日本のODAが、真に現地の住民や農民の生活の向上に役

立つものとなるよう、絶えず注意を払って下さい!



(写真:セミナー後、当日の参加者で記念写真を撮影。左からCFFCの藤原敏秀さん、大阪大学の津田守教授、FoE Japanの波多江秀枝さん、ルチャナさん、ヒューライツ大阪の藤本伸樹さん、右端はジャーナリストの中井信介さん)


【参考サイト】

フィリピン・ボホール灌漑事業(FoE Japan)
http://www.foejapan.org/aid/jbic02/bohol/activity.html

ダム完成から10数年 ようやく見え始めた問題解決の糸口
――比・ボホール灌漑事業 現地ステークホルダー会合の報告(FoE Japan)
http://www.foejapan.org/aid/jbic02/bohol/press/20100917.html

セブ・ボホール関係(セブ南部埋立て事業、ボホールかんがい) (CFFCの藤原敏秀さんのサイト)
http://www.geocities.jp/fujiwara_toshihide/oda/cebubohol.html


【当ブログにおけるボホール灌漑事業の問題に関する過去記事】

【「ボホール灌漑事業」現地調査】報告書の公開と現地会合の方法等に関する要請書をJICAに提出(2010年8月9日)
http://d.hatena.ne.jp/odanetkansai/20100812/1285052450

【他団体の取り組み】6・24ODA改革を考えるセミナー「フィリピン・ボホール灌漑事業プロジェクト(現地調査)から日本の『援助』の問題点を考える」@京都
http://d.hatena.ne.jp/odanetkansai/20100618/1273810934

【他団体の取り組み】フィリピン・ボホール灌漑事業 現地NGOがJICA調査について要望書を提出
http://d.hatena.ne.jp/odanetkansai/20100519/1274529069

【他団体の取り組み/国際環境NGO FoE Japanプレスリリース】比・ボホール灌漑事業 JICA調査について意見書を提出
http://d.hatena.ne.jp/odanetkansai/20100514/1273583647

【他団体の取り組み】JICA理事長宛「フィリピン・ボホール灌漑事業の現地調査に関する意見書」提出される
http://d.hatena.ne.jp/odanetkansai/20100511/1273583647

事業仕分け・第2段】「有償資金協力」を議論−ボホール灌漑プロジェクトが追及される
http://d.hatena.ne.jp/odanetkansai/20100425

【TBSニュース】失敗したODAプロジェクトとしてボホール灌漑プロジェクトの映像を放映
http://d.hatena.ne.jp/odanetkansai/20100425/1272113161