【転載/連名依頼】ODA見直しに関する提言〜経済成長至上主義の見直し、「質」の確保に向けた選択と集中を


(写真:2010年2月に京都市内で行われた過去のODAの検証を求める集会「波多江秀枝さんのフィリピン報告会〜開発支援後の現地で残された問題―日本の責任は?」〔主催:関西フィリピン人権情報アクションセンター/CFFC〕。フィリピンでのODA案件〔ボホール灌漑事業、北ネグロス地熱発電事業、サンロケ多目的ダム事業〕をケースに過去のODAの検証がODA改革には不可欠であることを確認した)
出所:関西フィリピン人権情報アクションセンター
http://www.geocities.jp/fujiwara_toshihide/50/20100214.html


ODA改革ネットワーク関西としても4月23日(金)の例会(午後7時〜、@「ひとまち交流館 京都」2階市民活動総合センターミーティングルーム)で討議し、賛同を決定いたしました。極めてタイムリーかつ本質的な問題提起を含んだ提言です。連休明けに提出する予定で、5月5日(水)までが賛同への締め切り期限ですのでぜひ多くのNGOの賛同を(管理人)。

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【連名依頼】ODA見直しに関する提言〜経済成長至上主義の見直し、「質」の確保に向けた選択と集中

http://www.foejapan.org/aid/doc/100414.html

*転載歓迎です。重複の場合はご容赦下さい。

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皆さま いつもお世話になっております。FoE Japan/メコン・ウォッチの満田です。

先日は、事業仕分けの活用や、ODAの見直しの検討プロセスの公開に関する要請に連名をいただきまして、誠にありがとうございました。おかげさまで、ODAの見直しに向けては、少しずつ議論が進みつつあるところです。一方で、外務省の中間とりまとめでは、過去のODAについて、「東アジア地域は『開発』を通じて安定と成長を実現」「日本外交の重要な手段として成功」と極めて甘い評価しかしておらず、中進国への円借款の拡大など、注視すべき内容も盛り込まれています。

こうした中、国際環境NGO FoE Japan、メコン・ウォッチ、JACSESは、他のNGOや関心をもってくださる皆さまとともに、さらに踏み込んだ形でODAの見直しに関する提言を行っていきたいと考えております。内容としては、①経済成長至上主義を見直し、ODAを大規模インフラから人間の安全保障分野にシフトさせること、②除外リストの設定、③独立評価局の設置、④無償資金協力の趣旨の明確化――などをです。提言は下記URLまたは本メールの末尾をご覧ください。

http://www.mekongwatch.org/resource/documents/rq_20100416_01.pdf

提言を行うにあたっては、ビルマミャンマー)、ラオスベトナムカンボジアケニアなど9カ国15事業のレビューを行い、その結果、軍事費の割合が高い国、熱帯モンスーン地域の大貯水池事業などへのODA支援は、はじめから除外すべきという結論を導きました。

http://www.mekongwatch.org/resource/documents/rq_20100416_02.pdf

現在、この趣旨に賛同し、連名していただける団体・個人の方を募集しています。 連名いただける場合は、4月26日(月)までに、①団体としての賛同か、個人としての賛同か、②団体名・個人名(個人の場合は、併記可能な所属先・肩書きなど)、③連絡先のE-mail――を、finance@foejapan.orgまでご連絡いただけますようお願いいたします。 再度、皆さまのご協力いただければ幸甚でございます。

【問合せ先】
国際環境NGO FoE Japan 「森林」「開発金融と環境」プログラム
〒171-0014 東京都豊島区池袋3-30-8  みらい館大明1F
tel: 03-6907-7217  fax: 03-6907-7219

メコン・ウォッチ
〒110-0015 東京都台東区東上野1-20-6 丸幸ビル2F 
tel: 03-3832-5034  fax: 03-3832-5039info@mekongwatch.org

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2010年4月XX日ODA見直しに関する提言

1.「コンクリートから人へ」:予算配分を大規模インフラから人間の安全保障分野へ

【認識】

・現在までのODAは、結果的に、日本の高度経済成長モデルを東アジア地域に輸出した。現在、その成長モデルを、中国、タイ、ベトナム等が、さらに他の国々に輸出している状況。
・この高度経済成長モデルは、エネルギー、物質多消費型であり、現在、環境、水、土地、資源の制約から、限界が見え始めている。

・外務省の「ODAの在り方に関する検討」では、急ぎすぎた経済成長の影で生じている副産物(例:貧富の格差、農村経済の破壊、公害の発生)については無批判である。

・大型インフラの建設ラッシュによる環境・社会面での負の影響も生じている。また、富裕層は潤うが、貧困層の貧困化を招いている傾向もある。

【提言】

・予算配分を大規模経済インフラから、保健医療、教育、格差解消などの人間の安全保障分野にシフトさせる。

・ある程度以上の経済発展を達成した国、少なくとも中進国に対しては、経済インフラ支援は行わない。

2.効果的な案件に集中するための体制〜除外リストの設定を

【認識】

ODA予算には上限がある。ODA資金を効果的な案件に集中させていく必要がある。

・問題案件は、想定された援助効果を生まないばかりか、日本にとっても相手国の住民にとっても、財政的・社会的なコストを生み出す(注1)。

・質の高いODA案件を実施するためには、1事業あたり、案件形成段階や監理にある程度のコストをかけるべきである。投入可能な人件費に上限がある中、必然的に、案件を絞り込んでいく必要がある。

【提言】
リスクが高く、または無駄となりがちなODA案件を、事前に除外することを提言する。ODAおよび日本の公的融資案件を含む15案件のレビューに基づき、除外カテゴリーを下記のように設定した。 ○事業実施国・機関に由来する除外リスト

・軍事費が極端に多い国における事業・軍の関与がなければ事業の実施が困難な事業

・過去、同じ実施主体が行った案件で環境社会配慮問題が解決していない場合 ○事業の性格に由来する除外リスト・熱帯モンスーン地域における大貯水池事業

分水嶺をまたいだ水の移動(=他水系への放流)を伴う大規模な水力発電事業・同一の河川を利用して複数のダムを建設する計画で、先行するダムの効果が確認できない場合

・代替地の確保が難しい地域における大規模住民移転事業

・保護地域指定を撤回して実施する事業・環境影響が国境を超える可能性のある河川でのダム開発事業 →除外カテゴリーに関する根拠については、別紙1参照。

3.審査・事前評価及び事後評価体制〜独立評価局の設置を

【認識】

・現在の審査/事前評価、事後評価は批判的観点からの省察が不十分で、問題点が看過されがちである (注2)。

・既存事業の事後評価が実質的には新規案件の審査にフィードバックされていない。

・開発ニーズが過大に評価され、不必要な事業が実施されることもある。・外部評価が十分機能していない。

・国際開発機関の独立業務評価局のように、透明性を持ってJICA業務を批判的に省察し業務改善に結びつける、業務部から独立した部局を設置することが必要である。

事業仕分けにおいて廃止が提言されたJICA研究所の年間約10億円の予算は、こうした活動に振り向けることで、将来の無駄の防止と事業の改善に直接つながる。

【提言】

・独立評価局を設置する。独立評価局は、監事による監査(注3)を補佐する。また、自らが行った評価結果を公開する。

・JICA研究所は廃止し、独立評価局設置の財源とする。 →他機関における独立評価体制の事例については、別紙2参照。

・一定金額以上の大規模な経済インフラ案件については、案件採択前に開発ニーズも含めた外部審査を実施し、その結果を公開する。・外部評価に関与する委員の人選において、利益相反(conflict of interest)の観点から一定の独立性要件を設ける。

・外部評価委員会への一般参加及び一般参加者の発言を認める。

・評価の教訓を適切に反映するフィードバック体制を構築する。事前評価の「過去の類似案件の評価結果と本事業への教訓」において、具体的な案件名を記載し、関連する事後評価を参照できるようにする。

4.無償資金協力の趣旨の明確化を

【認識】

・無償資金協力の全体額についての制約がある中、保健医療、教育、格差解消など、人間の安全保障にかかわるソフト面での協力事業が優先されるべきである。

・高い経済的効果が見込める経済インフラ案件は有償資金協力でも協力が可能である(注4)。

・水産無償資金協力は、食糧援助などと異なり通常のプロジェクト無償と同じでかつハコモノが中心である。厳しい財政状況の中、無償援助は細かい仕切りを作らずに柔軟かつ効果的に使うべきである。

【提言】・大規模な経済インフラ案件に無償資金協力を供与すべきではない。

・水産無償資金協力は廃止すべきである。

以上 別紙1 除外リストの根拠と事例(下記PDF版をご覧ください)

http://www.mekongwatch.org/resource/documents/rq_20100416_02.pdf

別紙2 他援助機関の評価体制(下記PDF版をご覧ください)

http://www.mekongwatch.org/resource/documents/rq_20100416_03.pdf

注1)甚だしい例としては、訴訟や工事中断などに至ったケースもある。例えば、インドネシアのコトパンジャン水力発電事業では、8,000人を超える住民が、日本政府、JBIC、JICA、東電設計に対して、ダムの撤去-原状回復と損害賠償を求めて東京地裁に提訴している。また、タイのサムットプラカン汚水処理事業は、重大な環境影響や汚職が大きな社会問題に発展し、工事が中断。その後JBIC融資分全額が日本政府に返還された。

注2)妥当性に関する評価が十分に行われていなかったり、負の影響が生じているのに、それが見過ごされていたりするケースが少なからず見られる。例えば、ラオスのナムルック水力発電所建設事業の事後評価では、「補償に対する満足度も高い」「生活環境が大きく改善されている」「住民に対する負の影響はほとんどない」と記載されているが、住民は「乾季の間は水が足りなくなる」「送電線はひかれているものの接続料金が高いので電線につないでいる家はほとんどない」「川の水位が下がったので畑を灌漑するのが難しくなった」「魚の収穫量が減少した」等の懸念を示していることが報告されている。

注3)独立行政法人通則法第19条第4項、第5項。

注4)一方で、経済的効果のある(とされるが実際はない)経済インフラを、貧困国に借款で行い、債務が返せなくなることは回避しなくてはならない。経済インフラについては、本ペーパー「1.」に提言したような議論が必要である。