【産経新聞】イラク復興、ODA呼び水に企業進出図る 坂本威午・JICA事務所長

イラク復興、ODA呼び水に企業進出図る 坂本威午・JICA事務所長
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/111117/fnc11111721370024-n1.htm

2011.11.17 21:37

 国際協力機構(JICA)は今年8月、イラク戦争後の復興・開発支援を本格化させるため、首都バグダッドに事務所を開設した。復興・開発を通じて中東地域の安定化に貢献するとともに、日本のエネルギー安全保障や海外市場開拓・確保の観点から重要なイラクとの関係強化をめざす。JICA事務所長に就任した坂本威午氏に今後の活動について抱負を聞いた。(聞き手 気仙英郎)

 −−バグダッド事務所の目下の課題は

 「イラクとの関係で大事なのは資源と市場だ。こうした優位性を踏まえ、持続的開発に不可欠な民間ビジネスを活性化させたい。今後世界でも有数の経済発展が見込まれており、各国企業の進出競争が激化している。その中で、日本企業進出の側面支援も重要な課題だ」

 −−石油等資源権益獲得は難しいようだが

 「イラクは根本方針となる石油・ガス法について国会で審議中だが、実はもう7年も議論している。過去の油田開発に関する外国企業との契約や、同国の代表的な油田であるキルクーク油田の帰属問題について、自治を認めている同国北部のクルド地方政府とどう調整するか等の問題がある。また、中央政府が地方に分配している石油収入の分配の仕方にも議論がある。こうした中で、外資の権益獲得はまだ難しい」

 「ガラフ油田という日本企業が参画している鉱区もある。しかし、開発機材やプラント提供での参画であり、直接的な権益獲得の契約ではない。今後、日本の石油安定供給をめざす上でも、イラクとの関係を多重的、多層的に構築することが必要だ」

 −−イラクが復興し国民の購買力が高まれば、日本企業にとっての魅力も増す

 「すでに人口3000万人で一人あたりの国内総生産(GDP)は3000ドル規模の市場だ。さらに、今後、急速な成長が期待できる。近隣のトルコをはじめイタリア、フランス、韓国、中国などが官民挙げて進出している。米国もクリントン国務長官自らが進出に向けて大号令をかけている。イラクの重要プロジェクトはめじろ押しであり、早期に進出すれば先行利益を得られる。幸い70〜80年代の大活躍もあって、日本企業に対するイラク国民の期待は大きいが、一方で日本企業の姿勢は慎重・消極的とみられている」

 −−今後の具体的な政府開発援助(ODA)は

 「円借款を軸に技術協力も積極的に推進していきたい。JICAの役目は魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える家庭教師だ。GDPの6割を石油関連が占めているのはいびつな状態だから、産業構造の多様化も図らねばならない。雇用吸収力、食糧安全保障の観点などから農業開発が次に重要だ。これまで円借款では約6割を日本企業が受注してきており、ODAを呼び水に日本企業の進出も加速させたい。東日本大震災後のわが国経済の活性化の観点からも、ODAの役割は重要だ」