【NGO5団体】ODAによる海外投融資再開 決定プロセスに関する要請書をJICAに提出(2010年7月20日)

2010年7月20日ODA改革ネットワークを含むNGO5団体が連名で「海外投融資再開決定プロセスに関する要請書」をJICAに提出しました。

 本文中に「ODA を使った海外投融資につきましては、過去の実施された案件では様々な問題が指摘されてきました。例えば、マレーシア・リンバン省林業開発協力事業やインドネシア・アサハンアルミニウム等の個別事業において、ほとんど情報公開されなかったこと、環境社会配慮上の問題があったこと、現地住民の貧困削減に貢献していないこと、特定企業・業界への支援になっていること等が指摘されてきました」とあるように、このスキームは主に日本企業の海外進出を政府が後押しする手段として使われてきました。海外投融資再開はこの間の「日本企業の経済進出や国際競争に勝つためにODAを使え」という財界の要求に応じる動きであり、今回の要請書提出は、多くのNGOがこうした動きに対して危惧を抱いていることを示したものです。


 管理人


国際環境NGO FoE Japanのサイトより
http://www.foejapan.org/aid/doc/100720.html


ODAによる海外投融資再開 決定プロセスに関する要請書をJICAに提出


2010年7月20日

海外投融資は、2001年に行政改革の一貫として廃止されたODAによる民間セクター支援のスキームですが、昨年よりJICAを中心にこのスキームの再開が検討されています。

しかし、次のことから再開は慎重に検討されるべきだと考えます。

・過去に実施された海外投融資の事業において、透明性、特定業界への支援、援助らしさ希薄等、様々な問題が指摘されてきたため、再開にあたってはそれらの課題をクリアする必要がある。

・今年4月の事業仕分け第2弾における外務副大臣による発言からも明らかなように、これまで海外投融資の財務・経済面での成果や課題も適切に把握し公開してきたとは言えないこと。

・海外投融資は、過去の行政改革で一度廃止されたスキームであること。

再開に関するプロセスについて、透明性の確保、徹底的な議論、第三者による議事進行などを求めて、FoE Japan ほかNGO5団体は、JICAに要請書を提出しました。


>海外投融資再開決定プロセスに関する要請書[PDF]
http://www.foejapan.org/aid/doc/pdf/100720.pdf


(以下、要請書本文)


2010 年7 月20 日


国際協力機構 民間連携室室長 村田修様
企画部部長 岡村邦夫様
CC:外務省 国際協力局開発協力総括課長 牛尾滋様
財務省 国際局開発機関課長 土井俊範様
経済産業省 貿易経済協力局資金協力課課長 篠田邦彦様


ODA を使った海外投融資再開に関する意思決定プロセスに関する要請書


ODA 改革ネット
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO FoE Japan
日本国際ボランティアセンター(JVC
メコン・ウォッチ


貴機構は、これまでODA を使った海外投融資の再開を検討されてきましたが、近々、
その制度設計のための有識者委員会を設置するご予定であると理解しております。

ODA を使った海外投融資につきましては、過去の実施された案件では様々な問題が
指摘されてきました。例えば、マレーシア・リンバン省林業開発協力事業やインドネ
シア・アサハンアルミニウム等の個別事業において、ほとんど情報公開されなかった
こと、環境社会配慮上の問題があったこと、現地住民の貧困削減に貢献していないこ
と、特定企業・業界への支援になっていること等が指摘されてきました。また、本年
4 月の事業仕分け第二弾では、外務副大臣が過去の海外投融資による持ち株の配当、
現実の簿価、現在の価値等を洗い出しているところだと発言していることからもわか
るように、これまで海外投融資の財務・経済面での成果や課題も適切に把握し公開し
てきたとは言えません。さらに、海外投融資は、過去の行政改革で一度廃止されたス
キームであります。このような事情に鑑み、海外投融資の再開は、慎重に検討するべ
きであると考えます。

従って、その再開の検討プロセスを、以下の手順・方法で実施していただけるよう、
要請致します。

1. 有識者委員会での議論を開始する前に、まずは JICA および共管三省による過去
の実施案件の研究・評価の結果を公開すること。

2. 以下のような方法で有識者委員会を開催すること1。
(1) 有識者委員会のメンバーにはNGO も含めること。また、現在検討されている海
外投融資の支援対象にはマイクロファイナンスやBOP ビジネスなど、NGO の現
場での知見が必要とされていることから、このような事業に関する知見をもっ
た実施型のNGO と、政策提言型のNGO の、少なくとも2 名の枠は確保すること。
(2) 会議は完全公開とし、関心を有する誰もが参加できるようにすること。
(3) 進行役は共管三省・JICA と金銭的利害関係を持たない第三者とし、公正に議
事を進行すること。
(4) 委員以外の参加者が発言できるようにすること。ただし、発言者は、責任を持
った発言を行うことが求められる。
(5) 議論を十分尽くすことのできる開催回数・時間を確保すること。
(6) 議事録は逐次、記名方式とし、ウェブサイト等で公開すること。

3. 有識者委員会では、まず過去の教訓や他の公的資金との重複などを含めてODA
使った海外投融資再開の必要性を議論し、それが確認されてから制度設計のため
の議論に入ること。

以上

(連絡先)
国際環境NGO FoE Japan 清水
〒171-0014 東京都豊島区池袋3-30-8
みらい館大明1F
tel: 03-6907-7217 fax: 03-6907-7219

1 このような高い透明性を確保したコンサルテーション会合は、JICA/JBIC の環境ガイドライン
改訂の議論の際に採用されている。