【ODA改革ネットワーク関西の立脚点】「ODA改革の視座−地球公共政策としてのODAをめざして−」(2005年7月)

以下に掲載するのは日本のODA50周年に際して、日本のODA改革の方向性を明らかにする目的でODA改革ネットワークがまとめたものです。ODA改革ネットワーク関西はこの「三つのホショウ」論を基本的な立脚点として活動しています。


   オープンポリシー「ODA改革の視座−地球公共政策としてのODAをめざして−」
                                ODA改革ネットワーク(2005年7月)

● はじめに

 2004年10月、日本のODA(政府開発援助)は50周年を迎えました。戦後賠償と同時に細々と始まった日本のODAですが、この50年間に世界経済における日本の地位は飛躍的に向上し、それにともなってODAの額も増大してきました。

 過去50年間を振り返ると、南北の格差はより一層増大し、貧困人口は増加しています。加えて、地球環境や地域の環境・健康などへの不安が拡がっています。IMF国際通貨基金)やWTO世界貿易機関)などが主導する「市場偏重の経済のグローバル化」がこの傾向を助長し、一握りの社会的強者への富・資源の集中と、将来世代への環境負荷の増大をもたらし、地球上の多くの地域で、将来への不安と絶望、憤懣が渦巻いています。

 日本のODAも、依然としてODA受取国の住民・NGOから人権侵害や環境破壊が指摘されるように、ODAの受益者である受取国住民にとって必ずしも歓迎されるものにはなっていません。また、2003年に改定されたODA大綱に見られるように、日本のODAの目的として、日本の短期的な経済利益としての国益志向が強く打ち出されてきたことに対して、受取国の住民・NGOのみならず、世界の多くの市民・NGOから懸念が表明されています。

 援助を不要とする社会の実現がODAの最終目標であるにも関わらず、地球社会は今、より一層援助を必要としています。ここで改めて、日本のODA50年の歴史を謙虚に顧み、世界の市民・NGOから信頼される「地球公共政策としてのODA」をめざして、私たちの考えるODA改革の視座を、みなさんとともに共有・進展させていくことのできる「オープンポリシー」として、ここに提示したいと思います。

※「オープンポリシー」の考え方について
 コンピューターの世界での「オープンソース」の考え方と同じようにこの政策提言文書の作成意図を理解し、ODA改革の志(こころざし)のある方ならどなたでも、この文書を各自でバージョンアップすることができるという考え方です。ODA改革ネットワークではこの考え方のもとみなさんとともに「ODA改革の視座」を充実させていきます。


● 基本理念・・・三つのホショウとしてのODA

 ODAが受取国の地域住民を主体に、地球規模の解決をめざす「地球公共政策」として行なわれるために、以下の三点を基本理念とする。

① 将来の地球社会の「保証」
 ODAは、地球社会を永続化させるために供与されること。

② 国境を越えた社会「保障」
 ODAは、生命の維持すら困難な人々への福祉として供与されること。

③ 行き過ぎた経済活動に対する「補償」
 ODAは、日本社会の対外依存度の高い経済活動による、破壊・収奪への償いとして供与されること。


● 三つの原則

 ODAを供与するにあたっては、受取側、供与側双方が対等・平等な関係であることが前提になる。そうした上で、以下の三点を原則とする。

① 住民主体の原則
 ODAによる開発の主体は受取国の地域社会の住民である。このことは実施レベルにおいてのみならず、政策立案レベルにおいても確立されなければならない。加えて、政策立案レベルにおいては、日本社会の住民はもちろんのこと、広く世界中の住民に対するプロセスの公開と参加が確保されなければならない。

② 最貧層優先の原則
 ODA供与により格差が助長されるのではなく、格差が解消されるよう、最貧国・最貧地域の最貧層、先住・少数民族、女性、子ども、高齢者、障害者、難民、流民などへのODA供与を優先させなければならない。

③ 地球規模の課題解決の原則
 貧困根絶、地球環境の回復、ジェンダー配慮、人権、民主主義の確立、紛争回避などの地球規模の課題解決に向けてODAは供与されなければならない。逆に、ODA供与によって、決してこれら地球規模の諸課題を深刻化させるようなことがあってはならない。


● 具体的施策

ODA現地化の促進
 ODA実施体制の充実を図るために、受取国における現地事務所の権限強化、現地スタッフの要員増強を図る。それをもとに受取国の住民・NGOとの、実施レベル、政策立案レベルにおける協働を促進する。

② 情報公開の徹底
 ODAに関する情報公開をより一層促進する。とりわけ、受取国の住民に対して適正な情報公開を実現するために、関連する情報を少なくとも受取国の公用語にて最初期の段階から公開する。

③ 異議申し立て機関の常設と国会の関与
 ODAに関する異議申し立てを受け付け、審査するために、国会にODA小委員会を常設する。また、同時にODA小委員会では、日本社会におけるODAへの理解を促進するために、予算、決算時における詳細な報告を義務づける。

④ 適正な評価実施
 ODAを実施するにあたっては、環境、社会、ジェンダーなどに配慮する適正なガイドラインに基づいて、最初期の段階から住民参加を基本とする事前評価、モニタリングを実施し、問題ある場合には実施を停止、中止する。また、ODA実施終了後には、同様な手続きで第三者による事後評価を実施し、その結果を今後のODA実施にフィードバックする。

⑤ ミレニアム開発ゴール(MDGs)達成の最優先化
 日本政府も提案して国連で採択されたMDGsの達成を実現するために、MDGsに盛り込まれた分野へのODA供与を最優先化する。

ODAのアンタイド化と無償化
 ODAによる公的債務が受取国市民に重く圧し掛かっているこれまでの経験に鑑み、無償のアンタイド化を促進した上で、ODAの無償化を進めていく。

⑦「地球市民教育(学習)/開発教育」の推進
 地球的規模の課題と日本に暮らす私たちとの関係を理解し、問題解決に向けた国際協力の必要性を認識し、私たちの暮らしを見直すための「地球市民教育(学習)/開発教育」を、学校教育、社会教育、生涯学習などあらゆるレベルで推進する。

⑧ 援助機関の一元化とODA基本法の制定
 13の府省にまたがり、縦割り的に行われているODAの弊害を正すため、独立した国際開発協力省を新設し、実施機関もその省のもとに一元化する。また、この提言の内容を実現するためのODA基本法の制定を急ぐ。

                                     以上