【他団体の取り組み/〈NGOと社会〉の会】経済成長主義と官僚主導にNon!を−6・6シンポジウム「このままでいいのか、ODA どうする、NGO」報告

2010年6月6日、東京において〈NGOと社会〉の会主催によるシンポジウム「このままでいいのか、ODA どうする、NGO」が行われました。

(関連記事)
【他団体の取り組み】6・6〈NGOと社会〉の会公開シンポジウム「このままでいいのか、ODA どうする、NGO」@東京
http://d.hatena.ne.jp/odanetkansai/20100510/1273485307

 東京でのシンポであり関西からはなかなか参加できず残念に思っていましたが、今回、同会のニューズレター『NGOと社会』最新号(2010年8月25日 第7号)が発行され、シンポジウムの全容が明らかにされました。そこで議論されている中身はODA改革ネットワークとしても全国合宿などで確認してきた内容と共通しており、今後、日本の市民社会や社会運動内部でここで確認された見解を幅広く共有化することが問われていると痛感しております。

 ここでは、一部を抜粋してご紹介しますが、全文は以下のニューズレター本文をお読みください。

 管理人



ニューズレター『NGOと社会』2010年8月25日 第7号
http://www.shinhyoron.co.jp/blog/wp-content/uploads/2009/10/ngotosyakai_nl_07_201008252.pdf


(目次)

●シンポジウム報告
経済成長主義と官僚主導にNon!を
NGOと社会〉の会 第6 回シンポジウム「このままでいいのか、ODA どうする、NGO」(2010年6 月6 日、共催:法政大学国際文化学部) を終えて
 藤岡美恵子(〈NGOと社会〉の会 代表)

●官僚主導から市民主導へ
だれに対してなにを提言するのか
 村井吉敬早稲田大学教員・APLA共同代表)

●複製される成長神話とODA
 満田夏花 (国際環境NGO FoE Japan/メコン・ウォッチ)

●「南北問題」に立ち返る
 今泉裕美子 (法政大学国際文化学部教員)

●シンポジウムに参加して………永野宏和 仲尾望 池田彩 (法政大学国際文化学部国際文化学科3 年)


(以下、一部抜粋して紹介)


【シンポジウム報告】

経済成長主義と官僚主導にNon!を


NGOと社会〉の会 第6 回シンポジウム「このままでいいのか、ODA どうする、NGO」(2010年6 月6 日、共催:法政大学国際文化学部) を終えて


藤岡美恵子(〈NGOと社会〉の会 代表)


■「国益」追求手段としてのODA


 日本のODA(政府開発援助)が「国際協力」の名分とは裏腹に、再び経済権益を中心とする国益追求路線に明確に舵を切っている。

 NGOは1980年代以来、自国の利益追求ではなく南北格差是正と国際連帯のODAを、経済
中心主義ではなく持続可能な社会のためのODAをと主張し、政府への働きかけを行って
きた。しかし、今年行われた外務省自身によるODA見直しの結果は、「途上国の持続的経
済成長の後押し」と「日本の成長戦略におけるODAの活用」を開発協力の3 本柱の一つに挙げるというものであった。見直しの過程で、NGOから経済成長主義の脱却をという意見提起も行われたが、それが完全に否定されたことになる。


■経済成長路線をなぜ批判しないのか


 シンポジウムでメコン・ウォッチの満田夏花氏は、日本のODAが相変わらず経済成長の
ための大規模インフラ事業を援助し、その結果、現地住民の生活破壊や環境劣化を引き起こしているにもかかわらず、経済成長主義を批判するメコン・ウォッチのような存在は国際協力NGOの中では少数派だと述べた。では大半の国際協力NGOは、経済成長主義を批判し
ない代わりにどんなビジョンを提出しているのだろうか? 多くのNGOが提唱する「貧困削
減」は経済成長で可能なのか? 保健、教育、ジェンダーといった分野に資金を重点的に充てれば国内・国際の格差が縮小し、平等な世界が生まれるのか? そうは思えない。NGO
の政策提言や議論を見ても、なぜ、どのように「貧困」が作り出され「平和」が破壊されているのか、そこに日本の「国際協力」政策がどう関係しているのか、政府がたじたじとなるような、第三者もなるほどと首肯するような鋭い指摘があるわけではない。外務省との意見交換会でも、「国益」追求、経済成長路線のODANGOがこぞって批判するわけではない。むしろそういう意見表明は少数派のようだ。
 経済成長路線の破綻は国内外のどこを見ても明らかなはずなのに、なぜNGOはそれを強力に明確に主張しない/できないのか?
 このままでは国際協力NGOは将来、「南」の人びとから不正義の維持に加担したと評価されることになるのではないか。


■官僚主導に否を


 もうひとつの大きな問題は、富の分配や目指すべき経済、社会のあり方に関ってくるODA問題を、現在のように外務官僚との政策論議で扱えるのかという点だ(NGOは主に「NGO・外務省定期協議」でODA 政策について意見提起を行っている)。それは国会で議論するのが筋だ、というのが70 年代からODAをウォッチしてきた村井吉敬氏の主張だ(次頁)。NGO世界銀行への提言活動を分析したある研究者は、NGO の政策提言が採り入れられたのは、世界銀行の組織強化につながる場合だけだったと結論した。NGOはこの指摘を警句として受け止めるべきだろう。外務官僚にとってODAはあくまでも外交のツールである。NGOの役目は官僚と一体となって政策を考えることではなく、あくまでもODAによって影響を受ける人びとの立場に立って考え、意見することである。まちがってもこの国の官僚主導の政策決定を補完する役目を負ってはならない。